ハイクラス企業就活をしている息子ですが、そこで知り合う人々と雑談の中で趣味の話が出てくると、育ちの違いなどをひしひしと感じるそうです。学歴が高い人たちというのは親の経済力も高くお金持ちが多いようで、貴族のような趣味や一般の人が経験していないようなことをしているらしいです。
そんな中で、貧民出身の息子が唯一入れる会話があったそうで、それは息子が子供の頃からやっている音楽の習い事でした。このブログでは一度も書いたことがなかったのですが、実は息子は3歳から中学を卒業するまでバイオリンを習っていました。
貧民家庭の息子がなぜバイオリンを習うに至ったかと言いますと・・・
最初のきっかけは、私が息子を産んでしばらくしてこの本をプレゼントされ読んだことに始まります。
ソニーの創業者 井深大氏の著書です。ご存知の方も多いでしょうが、井深氏は幼児の教育活動に熱心に取り組んでおられる方でした。私たちが子供を持ち、幼児教育をしていたころは三歳児神話があり、この本を読んで当時の私はひどく感銘を受けました。そしてスズキ・メソードを知ります。
スズキ・メソードをご存じない方のためにWikipediaより抜粋いたします。
公益社団法人才能教育研究会が普及推進している活動で、音楽を通じて心豊かな人間を育てることを目的とする教育法の一つ。日本のヴァイオリニスト鈴木鎮一によって創始され、日本、アメリカなどで教育活動が展開されている。主な活動は音楽教育であるが、それが本来の目的ではなく、音楽によって子供の心を豊かにし、自信をつけることにあるとしている。
Wikipediaより
鈴木鎮一氏の著書「愛に生きる」を読んでまたもや感銘を受け、息子の教育にスズキ・メソードを取り入れたいと思ったのでした。
しかし、庶民には馴染みのない楽器のバイオリン。私は触ったこともなく、現物を目の前で見たことすらありませんでした。高価な楽器のイメージもありましたし、我が家で購入できるものなのか???そもそも息子は音楽に興味があるのだろうか・・・・と不安はつきまといました。
しかし、息子を観察していますと、どうも音楽のセンスはあるようで、耳が良く、一度聞いた歌はすぐに覚えてメロディーを口ずさむほどでした。いわゆる絶対音感を持っているようだと気付きました。
調べていきますと、バイオリンは小さな子供でも始められ、分数バイオリンを購入し、体のサイズに合わせて買い替えるものだということもわかりました。
いざ!見学へ!
いくつかのスズキ・メソードの教室を回り、見学をし、先生とお話をしてみました。スズキ・メソードの理念は素晴らしく、息子に絶対にやらせてみたいと思いましたが、通える範囲のお教室は、なぜかどこの先生とも波長が合わない感じがして、ピンときませんでした。学校の理念は素晴らしいのですが、実際に手取り足取り指導をしていただくのはお教室の先生ですから、先生との相性はとても大切だと思いました。息子にバイオリンを習わせたいのではなく、あくまでもバイオリンはツールであり、スズキ・メソードを息子の教育に取り入れたかったのですから、どうすべきか非常に悩み、選択に迫られました。
しかし、散々悩んだ末、スズキ・メソードのお教室には通いませんでした。(スズキ・メソードの名誉のために付け加えさせていただきますと、決してお教室の先生が悪かったというわけではありません。相性を感じなかったというだけでした。)
しばらくは習い事のことはすっかり忘れていたのですが、息子は相変わらず耳がよく、そして歌も上手く、声も綺麗なことに気づきました。保育園の先生にも褒められる程でした。
これは・・・・
音楽をやらせてみてもいいんじゃね?!
と子供コーラスのお教室を探してみたのですが、さすがに3歳児のコーラス教室はなく、3歳児でもできる音楽教室をと探し始めました。結局、ピアノかバイオリンくらいしか3歳児が習える音楽教室はなく(リトミックは除外)、再びバイオリンを習わせる方向でお教室を探し、いくつかのお教室を見学をしてみたところ、息子ととても波長の合う、そして私も「この先生なら!」という方に巡り会うことができたのでした。
3歳になったばかりの息子でしたが、体格が良く、姿勢も良く、そしてお行儀もよかったので、
「3歳でもこれだけ姿勢がしっかりしていれば、バイオリンを持つことが出来ると思います。お行儀も良いので、弓を振り回して遊んで壊してしまうこともなさそうですし、バイオリンを始めても大丈夫だと思いますよ。」と先生にお墨付きをいただき、その先生に習うことが決まったのでした。
楽器屋も併設したお教室でしたので、バイオリンもそこで安く購入することができました。1/16からスタートする分数バイオリンですが、息子は体格が良かったため1/10バイオリンからスタートしました。体のサイズに合わせて一つずつ全て買い替えて、一番最後の大人のバイオリンの購入だけは、先生の紹介で工房にて息子に合った良いものを購入させていただきました。
成長の早かった息子は、半年しか使わなかった分数バイオリンもあり、ため息が出た時期もありました。やはり楽器の購入は費用がかかりますので・・・
それでもピアノの購入に比べれば、費用は抑えられたのではないかと思っています。
息子と先生との相性はかなり良く、中学を卒業するまでお世話になりました。その先生だったからこそ、息子は通い続けられたのだと思っており、今でも感謝しかありません。控えめで上品で、子供に優しく寄り添ってくださる良い先生でした。(しかも優秀で超美人でした!)
スズキ・メソードをきっかけにバイオリンの習い事を考え始めたのですが、結局はスズキ・メソードはやりませんでした。しかし息子自体、音楽のセンスがあり、自分の耳で音を作っていくバイオリンという楽器は息子に合っていたと思いましたし、音楽を楽しんでいたため、情操教育として音楽を取り入れ、息子と気が合う先生と二人三脚で歩めたことは、結果的に良かったと思っています。
そして息子はバイオリンだけではなく、ある団体のコーラスグループにも所属し、歌もうたっていました。この活動にも息子は満足しており、今でもその時にできた仲間を大切にし、付き合っています。
一時は息子は音楽にどはまりし、オペラ歌手になりたいから音大に進みたいとまで言っていた時期もありました。
バイオリンを習い始めてから、2か月に1回はクラシックコンサートやオペラ鑑賞に行き、毎日のバイオリン練習も10歳まではつきっきりで欠かさず親子で一緒にやっていました。
楽器の習い事をすると親が子供の練習に付き合う必要があるため、とても大変です。それでも息子は音楽が大好きでしたし、私もそんな息子の成長を毎日一緒にみることが楽しみで仕方がなかったため、苦には感じませんでした。
息子は他の習い事をしていなかったので、そういう意味ではお互いに余裕があったのかもしれません。息子には他の習い事も色々勧めて、体験教室へ行ってみたりしたのですが、音楽関係以外は一切
NO!!!!!
という息子でした(笑)
唯一「やりたい」と息子が口にしたのが、バイオリンと歌という音楽関係だけでした。それだけ、息子は音楽との親和性が高かったのでしょう。
東大生の多くが子供の頃にピアノを習っていたという記事を読んだことがあります。因果関係はないと思っていますが、相関関係はあると思っています。東大生の親御さんの多くは富裕層ですから。
息子に音楽を習わせて目にしてきたことは、子供に音楽を習わせているご家庭は比較的経済的に余裕があり(うちは別ですが)、教育熱心なご家庭が多かったという事実です。
実際に息子のコーラスグループの仲間たちのそれぞれの進路は華やかで、医大生多数です。
ということで、長々と息子の子供の頃の習い事について書いてきましたが、ハイクラスな人たちとの会話には音楽の話題は結構付きものだそうで(というか当たり前の情操教育のような感じ)、バイオリンを習っていたことで「多少は並べる・・・頑張ってバイオリンを練習してきて良かった・・・」と庶民の息子が言っておりました。
まさかこんなところで、その価値を感じるとは・・・
そのために習っていたわけではないのですが・・・(笑)
一見、無駄に思える子供の頃の習い事や勉強が後々活きてくることは往々にしてあります。それがどんなところでどんな形で価値を感じるかはわかりません。子供の頃の体験はバカにできません。子供の興味のあることをどんどん体験させてあげてください。
もし、「習い事や幼児教育で何を勧めるか?」と問われたら、今なら「何でもいい」とそう答えます。
一番大切なのは、その子が何に興味を持って、何をしたいと思っているのかだからです。結局は、子供が興味を持っていることや才能がありそうなことをさせてあげる、これに尽きます。でも子供がどんなことに興味がありそうか、才能がありそうかはわかりませんので、親は子供をよく観察し、色んな体験をさせてあげることから始めるのがいいのではないでしょうか。
他所の子供の成功体験を聞いても再現性はありません。ピアノを習ったからと言って、東大に入れるわけではありません。その子ならではの興味や才能に沿ったものでなければ、子供側からすれば、ただやらされているだけにすぎません。
色んな体験をさせてあげてください、と言っても、ある程度経済的、時間的余裕がないと色んな体験をさせてあげることは難しいので、悲しいかな、そういうところに格差が生まれるのかもしれませんが・・・
高価な習い事のイメージのあるバイオリンですが、探せば良心的なお月謝のお教室はありました。実際、貧民母子家庭のうちでもなんとか捻出できました。庶民は庶民で、やれることからやって無理をせずその子にあった子育てをしていけばいいのだと思います。
練習を頑張り、汗と涙が滲んだ息子の分数バイオリンを久しぶりに眺めて、物思いにふける母でした。(一番長く使用した1/2バイオリンは愛着あり、手放せずに自宅で保管しています)