私のパートナーのEさんは偶然に腎臓がんがみつかり、クリニックから紹介された大学病院に行き、あれよあれよというまに手術が決まりました。今は大学病院に入院中です。3日後にがんに侵された右の腎臓を摘出します。
大学病院を紹介されてからはとてもスムーズに物事があっというまに進んで行きました。
1回目の診察
この日はどうしても私が仕事を休めず、付き添いができませんでした。Eさん一人で受診。さすが有名大学付属病院。ドクターは当たり前のように英語での診察可能で、Eさん一人でも全く問題ありませんでした。ただ、次回は入院の説明と手続きが必要になり、看護師や事務員は英語が堪能ではないため、誰か通訳できる付き添いと一緒に来るように言われたとのこと。
2回目の診察
どのように手術をするかの説明が主治医よりありました。
1.右腎盂に5センチの腫瘍があり、部分切除はできないため臓器の全摘になること。
2.3時間ほどの腹腔鏡手術となること。
3.手術日は2/28になり、入院期間は10日から14日間になること。
4.術後は5年間の再発リスクに備えた定期検診が必要であること。
5.手術をしてみないとわからないが、今は検査結果からは他臓器への転移は認められないため、腎臓の摘出のみで完治するであろうということと、化学療法(ケモ)は不要である可能性が高いということ。
6.右腎臓を摘出すると、残った左の腎臓に頑張ってもらわないといけないが、腎結石を患っていることから(腎結石に一度罹患した患者は70%ほどの人が再発するとのこと)、左の腎臓に負担が少ない生活を心がけて生活をしなければいけないこと。
診察はEさんのために全て英語で行われました。
専門的な内容なので、私は「聞き取れるかな?」と心配しましたが、全て聞き取れました。
よかった・・・・です。
そして看護師さんから入院に関する注意事項を聞き、入院までに用意するものとか、入院日前の2週間は不要不急の外出は控え、人と会わないこと、同居している家族とも食事を共にしないことなどの説明を受けました。これは日本語だったため、Eさんがわからなさそうなときは通訳をしました。
入院手続きは事務員の方とのお話。ここはもう、Eさんは全くのチンプンカンプンで、全て私がやりました。事務的な書類については外国人にとっては本当にハードルが高くなりますから仕方ないですね。
家に戻ってから「高額療養費制度」、「限度額適用認定」のお金の話、入院手続き書類の保証人の話をし、一緒に書類を作成しました。ファイナンシャルプランナーの資格があると、こういうお金関係の制度には強いので、全く問題ありません。Eさんは本当にラッキーな人だと思います。私がいうのも何ですが・・・病院で働く、お金関係の制度に強い、自分の母国語を話せる恋人って、異国に住む外国人からしたら最強じゃないですか?!
Eさんとはしばらく会えなくなるため、私は金曜日の晩からEさんに部屋にいき、週末を一緒に過ごしました。土曜日の晩には私は帰宅する予定でしたが、結局なんやかんやでEさんがそばにいて欲しいと言い、日曜日の晩まで一緒に過ごすことになりました。
それからEさんが入院するまでの2週間は、Eさんの入院や手術に関する不安を払拭するために、毎晩電話やLINEでメッセージでのやり取りをしました。Eさんは不安症なところがあります。特に入院中の感覚過敏については不安があり、個室を希望していましたが、空きがなかなかないことから入院当日にならないとわからないとのことで、より一層不安が増していました。
私はそんなEさんのために、言葉のこと、食事のこと、感覚過敏のこと等、入院中にお願いしたいことをリストにまとめて入院当日に看護師さんに渡すことにしました。また、痛みなどの症状や薬のことなどを看護師さんに訴えられるよう、英語対訳日本語リストも作成しました。紙に印刷しておけば、指差しも可能ですので、話せなくとも看護師さんと意思疎通できるため安心すると思いました。
入院をしたことのないEさんは準備すべきものもわからないため、準備も手伝いました。
入院日当日
病院までは荷物も多いし、人と接触したくないというEさんのためにタクシーで行くことにしました。タクシーの手配をしたことがないというので、これも私がやりました。
入院受け付けで書類を提出し手続きを済ませ、病棟に移動。病棟の入り口までしか付き添いができないかと思ったのですが、中に入れるとのことで、病棟のナースステーションで手続きをしていると、部屋まで付き添いが可能とのこと。
「え?」と驚いていると、どうやら個室に入院できるとのことでした。安堵の表情を浮かべるEさん。一番上のクラスの個室を希望していたEさん。2週間ほどの入院でしたが、差額ベッド代だけでも結構な金額(数十万円)になるんですけど、Eさんは問題ないと言っていました。さすが、元シリコンバレーエンジニアです。
入院のスケジュールの説明を看護師さんから聞きましたが、やはり難しい日本語が多かったらしく、私が横で通訳をしながら説明を聞くEさん。
そして私は午後から仕事があったため、Eさんの部屋を退出しました。
不安な入院生活を送るEさんのために私はカードを添えてお菓子を渡しました。
「お腹すいたら食べてね。」と言って。
カードは、夜桜と満月の絵が描かれています。
そこには
入院も手術もうまくいくよ、大丈夫。
退院する頃には暖かくなっていると思うから、一緒にきれいな桜を見に行きましょう。
一緒にまたきれいな満月をみましょう。
いつもあなたを想っています。
愛してる。
と英語で書きました。
Eさんにはじめて「I love you」を伝えました。
文学に親しんでいる方ならおわかりでしょうが、きれいな花、きれいな月は愛情表現です。
「月がきれいですね」は「愛している」の間接的表現であることは有名ですね。
(ご存知ない方はググってみてください)
きれいな花、きれいな月を見ましょうは、愛するあなたと同じものをみて同じ気持ちを共有したい、つまり、ずっと愛するあなたと一緒にいたいという隠れた愛情表現です。
また、月には他の意味もあります。
離れていても、同じ空の下に同じ月をみている私たちがいる。私は月をみてあなたを想っています。だからあなたも月をみて私を想ってください。
そんな意味を込めて、私はカードを作成し、Eさんに送りました。
実は私とEさんが初めて二人でデートした日は満月でした。私は空を見上げて
「今日は満月だね。きれいだね。」
と言ったのです。私たちは今でも満月の日はその時の話をします。一緒に満月を見た人と仲良くなるなんてそのときは私は全く想像していなかったため、満月を見ると私は変な感じがすると私はEさんに告白していました。つまり私たちにとって満月は特別な意味があります。
はじめてデートした日に、「月がきれい」と言い合っていた私たち。まるで運命のようです。
Eさんは夕方にカードを発見し、涙が出たとメッセージが来ました。深い意味があるとはその時は知らなかったようで直接的文章にだけ、感動したようでした。
次の日に、カードの隠された意味をEさんに説明すると、更に感動していました。
私たちはもう、I love youの関係でいいですよね?
私はEさんに「愛している」と伝えました。Eさんはまだ「愛している」も「I love you」も直接的に言ってくれませんが、「月がきれいだね」と言ってくれました。
にほんブログ村