私の腎臓をあげる

生き方

話し合いをしてから、私とEさんの絆はさらに深まりました。
二人で問題を解決し逆境を越えていくと、より親密になり互いの心の距離がぐっと近くなり、信頼度が増していくように感じます。

話し合いをした週末の次の週末に二人でお出かけをしました。
レストランで夕飯を食べながらEさんは

先週は本当に毎日不安で、しばらく話せないとなかみちに言われた日は眠れなくて、夜中に近所をひたすら歩いてました。

私は不安になりやすいです。ごめんね。

え?夜中に近所をうろついてたの?!

そんなに不安にさせてたなんて知らなかった。私のほうこそごめんね。

そんな風に脅すつもりじゃなかったの。

他にも何か心配なことや不安なことあるの?

いいえ。謝らないで。私が悪かったから。

私は自分の体のことをいつも心配してます。

もしかして、がんの転移とか?
残った腎臓にまた結石ができないかってこと?

そうです。いつも頭から離れません。

先日職場の人にがんで手術、入院したことを打ち明けました。

やっと話せました。

今まではがんのことが受け入れられなくて、周囲に話せないでいました。

職場の人に打ち明けたことで、さらに自分の中で少しづつ受け入れられるようになりました。

でも、まだ不安がいっぱいです。

時々宙を見ながら、苦しそうにそう話すEさん。
私はEさんに打ち明けようかどうしようかずっと迷っていたことがありました。
こんなレストランで話すのもどうかと思いましたが、苦しそうな表情のEさんに見て、思わず言ってしまいました。

Eさん、Eさんは血液型は何型?前から何回か聞いてるけど、Eさんはわからないっていつも返答するよね?けど私、Eさんの血液型が知りたい。

実は私、Eさんと血液型が同じだったらいいなあと思ってるの。


Eさん、もしEさんの残った腎臓に結石とか他の何かの問題が起きたら、私、Eさんに私の腎臓をあげる。

だから、そのことは心配しないで。

血液型が同じなら移植しても拒絶反応のリスクが少ないけど、もし血液型が違っても今は移植が可能らしくて、薬で拒絶反応を軽減できるらしいから、きっと大丈夫。

それにがんの転移も確立が低いって先生が言ってたから大丈夫だよ。

だから心配しないで。Eさんは何も心配することはないんだよ。

あっという間にEさんの顔がしわくちゃになり、泣き顔になりました。

涙を一生懸命こらえた表情になりました。

二人の間にしばらく沈黙が流れました。

見えるか見えないか程度の涙が流れているように見えました。

そういえば、Eさんはがんを告知されてから、まだ思いっきり泣いていなかったなあと思い出しました。
こんなところでカミングアウトしたことは間違いだったんじゃないか?そう思い、少し後悔しました。
外でなく、部屋であれば、二人だけならば、思いっきり泣くことができて、今までため込んできたものを吐き出してラクになれただろうに・・・とだんだひどく後悔してきました。

だめだ、ここはレストランだから泣いてはだめだ。

Eさんはそうつぶやきました。

そしてしばらくして・・・

ぎゅっと目をつぶっていたEさんは目を開けて言いました。でも目にはうっすらと涙が・・・。

なかみち、本当にありがとう。

うん。大丈夫だよ。大丈夫。

そう言って、私はEさんの手を両手で握りました。

私は人生を半分生き終えました。息子も立派に成長した今、悔いはなく、いつ死んでもいいと思っています。これからの私の人生はおまけだと思っています。生に対して執着がありません。

ならばこの体が有益に使えるなら、使って欲しいと思いましたし、Eさんに捧げたいと思いました。私にとってEさんは一蓮托生の相手のように思います。Eさんとは支え合って生きていきたいと心から思います。

だからこそ、何かあればEさんに私の腎臓をあげることは当たり前だと思いました。

一緒におじさんとおばさんになりましょう。

え?もうおじさんとおばさんだよ。(笑)

大丈夫。Eさんはちゃんとおじいさんになれるよ。

Eさんのおじいさん姿が想像できる。

とっても素敵なEさんのおじいさんの姿。

一緒におじいさんとおばあさんになりましょう。

Eさんは自分が長生きできず、おじいさんになれないと思っているようでした。

一緒に年をとりましょう。

私たちはずっとどちらかが亡くなるまで一緒にいる気がしました。

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