私の誕生日

生き方

喧嘩から始まった私の誕生日でしたが、Eさんに会った瞬間全てが吹き飛んで、彼に対しての愛おしさがあふれてきて仕方がありませんでした。

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Eさんは1時間も前から待ち合わせ場所の和菓子屋さんにいて、整理券番号も既に取ってくれていました。不貞腐れていた私が準備に手間取ってEさんに会うのが遅くなってしまっていたのです。それでもEさんはそんな私に対して、

「よかった。来てくれた。会えてよかった。」というのです。

1時間も前から待っていてくれていたこと、整理券も取ってくれていたこと、「よかった」と安堵の表情を浮かべていたこと、それらの全てからEさんの誠実さが伝わってきましたし、私を大切に想ってくれていることを感じました。

日本庭園のある綺麗な和菓子屋さんに入ると、あと30分程で閉店する時間帯でした。徐々に暗くなってライトアップされる庭園を眺めつつ、私たちは急いで注文をしました。

私たちは身長差があるため、立った状態だと互いの顔をあまり見ることができませんが、お店に入って向かい合って座ると、じっくりと互いの顔を見ることができました。私はEさんの顔をじっと見つめました。Eさんはそんな私の顔を見ながら、

「ごめんね」

と小さく言い、震える手で私の手を取り

「触っていい?」

と言いました。くすっと私は笑いながら

「いいよ」

と言いました。彼の私への想いが言動の一つ一つから感じられました。不安で緊張していたのか、運ばれてきたお抹茶の冷茶用のシロップボトルを倒してしまったりと混乱している様子も見受けられました。Eさんは気が小さいというか、心配性というか、他人の感情がダイレクトに伝わってしまう人なんだなあ・・・と思いました。それでも真摯な態度で私の機嫌をなんとか取ろうとしている彼なりの一生懸命さは、私の心を少しずつ溶かし、穏やかにしてくれました。それと同時に、Eさんに対してこんなに不機嫌な態度を取っている自分が少し恥ずかしくなりました。

少し気まずい雰囲気の中、お抹茶と和菓子を食べながら、

「抹茶と和菓子が美味しくて、こんなに雰囲気のいいお店なのに、あと少ししか時間がなくて、全然ゆっくりできないよ。事前に決めていれば、もっと早い時間に来てゆっくりできて楽しめたのに、どうして言ってくれなかったの?1週間も前に調べて知ってたんでしょ?一緒に来ようと思って調べてたんでしょ?」と私が言うと

「なかみちの誕生日だから、私の考えを押し付けるのは違うと思って言いませんでした。」と答えるEさん。

EさんはEさんなりに、私を優先し、誕生日をお祝いしようとしてくれていたということがわかりました。デートプランを提案し、リードしてもらうことが私は優しさだと思っていましたが、逆にEさんは提案せずに私に合わせることを優しさだと思っていたわけです。お互いの思いのずれが二人をすれ違わせていました。これには私は反省しました。今回の件は、Eさんが悪いわけでもなく、私が悪いわけではなかったのです。

生まれ育った文化が違うと物事の前提が違うように、良いと思っていることがお互いに全く真逆であることもありうるということを今回のことで気づかされました。特に島国で単一民族、そして同調圧力の強い日本では、常識、価値観が無意識に同じである前提で話し、”みんな同じ”が当たり前で行動しているので、暗黙の了解を相手に押し付けて生きているところがあるように思います。私が彼に「一般的な日本人の男性は、誕生日に誘ってくれた方が事前にプランを提案し・・・」なんて言ったことは、まさしくそういうことだと気づかされました。

一般的とか、他人がこうしているからと比較するのではなく、自分軸でどうしたいのかという視点で、どうして欲しいのかを相手に伝え、常にすり合わせていくことがよい関係を築く上で大切だと思いました。

申し訳なさそうに「ごめんね」と何度も言うEさん。私の方が申し訳なくなってきました。

お店を出て、近くの公園を散歩しましたが、その頃にはもうとっくに日は暮れ、暗くなっていました。でもその暗さが二人の顔を隠し、気まずい雰囲気もかき消してくれました。静かにゆっくり公園を歩き、そして月明かりの下でゆっくりと私たちはハグをしました。

会う時間が遅くなったことで、普段明るい公園ではできないこと、そう、”ハグ”をお互いに愛情を噛み締め合いながらできたことは、”禍転じて福と為す”というのでしょうか。そこで1時間ほど私たちはイチャイチャし、ハグをしてキスをしました。

お寿司を食べる約束をしていたので、その後私たちはお寿司屋さんに行き、お寿司を食べました。Eさんは海の近くで育ったため、どんな魚介類も食べられるので、色んなネタにチャレンジしていました。新鮮なネタで有名なお寿司屋さんでしたので、どれを食べても美味しく、二人共とても満足できたディナーとなりました。

その後、Eさんが

「私の部屋に来て」と言いました。

その日はEさんの部屋に泊る気分ではなかったため、私はお泊りの準備をしていませんでした。

「今日は帰る」と私が言うと、

半泣き顔になり、少しパニックになった様子でEさんは

「え??お願い!泊っていって。今日は一緒にいましょう、私たち」と言いました。

そんな表情で懇願されたら、さすがに私も断れなくなってしまい、その夜はEさんの部屋に泊まることにしました。途中のコンビニで歯ブラシだけを買わせてもらいました。生ものを食べた後なので、さすがに歯磨きはしたかった・・・笑

2回目におじゃまするEさんの部屋は、相変わらず小綺麗でシンプルな部屋でした。二人で笑いながら歯を磨きました。なんだか変な感じがしました。歯を磨き終わると、私たちはキスをしました。Eさんと過ごす2回目の夜。ちゃんと行為ができるか心配でした。「また痛かったらどうしよう・・・。」そんなことばかり考えていました。

でも、実際は前回と違ってリラックスしていたせいか、全く痛みを感じることなくスムーズに進みました。今回もやっぱり思ったことは、イギリス人は1回、1回の行為時間がとても長いということ。そして1回では終わりません。私とEさんは23:30から次の日の19:30まで愛し合いました。途中で4~5時間ほど寝たのですが、それでも20時間一緒にいて、ずっと裸のままで抱き合って、少し休憩をとりながらその間ずっと行為をし続けていました。もう、何度したのかなんて数えられませんでした。マグネットのように常にくっついていても苦に感じることはなく、唇を重ねるとすぐに燃え上がり止まらない私たち。エンドレスに続く行為。不思議な感じでした。私はこんなに長く男性と愛し合ったことはありませんでした。Eさんも初めてのことだと言っていました。とにかくお互いに相性の良さを感じました。

Eさんの歴代の彼女の話を少し聞かせてもらいました。今までの彼女さんたちは、どの人も付き合いが短かったそうです。Eさんは今までに3人の女性とお付き合いをしたらしいのですが、国籍が全員バラバラでした。初めての彼女はアメリカに留学(大学生)していたときにできたそうで、お相手は韓国人。二人目はアメリカで働きだしてからできた彼女で、アメリカ人。そしてやはりアメリカで働いていたときにできた彼女で、三人目はインドネシア人。その方が最後でしばらく10年ほど独り身だったとのことで、今回4人目が私で日本人。Eさんのインターナショナルな経歴には驚きました。彼にとって国籍は関係ないんですね。ちなみにイギリス人とは交際したことがないそうです。ということは、彼には交際の基準となるものがないのだと思います。

「あ・・・なるほど。だから今回のような喧嘩が起こるのか・・・」と私は思いました。
これだけの国際色豊かな交際経歴ならスタンダードがないため、お互いが話し合って、お互いにとってどういう交際の仕方がいいのが、お互いに作っていくスタイルになるんでしょうね、きっと。

また告白についても聞いてみました。日本の告白文化のことは知っていたようなのですが、やはりEさん自身、告白文化に親しみがないため、私とのことはどうするか考えたそうなのです。二人の関係が親密になってきたとき、私が告白を期待しているのではないか?と思ったそうなのですが、タイミングであったり何と伝えていいのかわからなかったそうで、自然に任せようと思ったとのこと。


日本の告白文化はEさんからするととても違和感があり、相手をよく知らないのに出会ってすぐに「付き合って」と言う一言でどうして彼氏彼女の関係になれるのか?と思うそうです。
気になる人がいたら、声をかけて、友達になってみてもっと相手のことを知りたいと思ったらデートに誘って相手を知り、更に親密な関係になりたいと思ったらさらに関係を深めて、そして自然に恋人になるというのがEさんの中での恋の図式らしいです。ということは、Eさんの中では私たちはもう交際しているのでしょうね。良かった。

ちなみにDatingについても聞いてみました。Eさんがアメリカに住んでいた時は、何人ものお相手とDateしてもよいと周りから聞いていたそうなですが、そのアメリカ式のDatingには馴染めなくて、

「それはおかしい。Dateする相手は一人じゃないとよくないと思っていた。」と言っていました。

「そこはイギリス式なのね。」と私は思いました。アメリカではDating期間は、正式な関係になるまでは、何人の人ともデートをしてもよいし、キスや性行為(体の相性を確かめるため)もありなのだそうですが、イギリスはデートをする相手は一人のようです。

「自分はシャイな人間だから、デートに誘うことはとても勇気がいって、頑張りました」と告白されたときは笑ってしまいました。確かにすごくたくさん誘ってくれていたなあ・・・と思い出し、あれは頑張ってくれてたんだとわかったからです。私はEさんを男性としてあまりみていなかったので、たくさん誘ってもらっていなかったらEさんとは付き合っていなかったように思います。それを伝えるとEさんは「頑張って誘ってよかった」と言いました。

それに「私たちの関係は、もうジムのみんなは感づいていると思う」と私が言うと、

Eさんは「そうだと思います。隠すつもりはないし、隠してはいないからそれでいいと思う。でもあえて自分たちから公言する必要はないと思う。」と言い、「なかみちはどう思う?」と私に質問してきました。

私も同感だったので、「私も同じだよ」と答えました。

はっきりとEさんから日本の告白文化のような交際宣言はありませんでしたが、今回の会話を通して、私たちは付き合っているのだと確信しました。

この日の私たちは、長い時間を共に過ごし、お互いの気持ちを確かめ合い、たくさん体を重ね、関係を深め合うことが出来ました。

雨降って地固まる、そんな誕生日となりました。

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